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その後、神社の木立で涼みながら、残りの花火を三人で眺めた。
「ここからでも綺麗に見えるな」
「貸し切りだしね! かえって良かったかも、莉穂」
慰めるように明るい口調で言う姉に微笑んでみせたけれど、私の落ち込みはその程度で癒えず、心はまったく笑っていなかった。
それは、生まれて初めて抱いた、姉に対する不信感のせいでもある。
家に帰ると、さらに親の説教が待っていた。
どうやら私は、〝ガラの悪そうな若い男の集団についていった〟らしい。
壽崎くんの格好が〝ガラが悪い〟かどうかはともかく、周囲の状況からして私には一切の抗弁は許されそうになかったので、黙ってそれに耐えた。
みんな、私を心配して怒っているのだから。
夏休みが終わり慌ただしい日常が始まる頃には、それはたいした話題でもなくなり、誰も口にしなくなった。
私も落ち込みから立ち直るにつれ、姉に対する不信感は次第に忘れていった。
けれど、その秋に起こったある出来事を境にして再燃し、その後の私の進む道に大きな影響を与えるほど、長く強く燻り続けることになるのだった。
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