初恋、そして封印-2

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その事件は、花火大会から二か月あまりが過ぎた、秋が深まる頃に起きた。 「莉穂、二階にジュース持って行ってくれる?」 「はーい」 今日は遼太郎が姉に数学を教えに来る日だ。それは互いの都合で時折飛ばしつつ、根気強く続いている。 あと一年で受験を迎えるので遼太郎も気を抜けない時期だけど、難関国立大を目指す遼太郎には、姉の課題の分野はセンター試験対策の基礎固めにちょうどいいらしい。 最初のうちは二人が勉強する部屋にいそいそとジュースやお茶を運んでいた母も最近は慣れて興奮が収まり、その役目は私に回ってくるようになっていた。 「もう氷入りのジュースはさすがに寒いんじゃない?」 「そうね。次は温かいポットのお茶にしようかしら」 そんな会話を交わしながら、リビングのドアを足で閉める。 行儀が悪いけれど、両手がお盆で塞がっているので仕方がない。 それから用心深く階段を上がり始めた。 最近は冷えるので、寒がりの私はモコモコの靴下を履いている。 決して、足音をしのばせていたつもりではない。 その靴下には滑り止めがついていないので、階段で滑らないよう用心して上がるのがここのところの常だった。
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