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覗いてしまったことは、二人に気づかれただろうか?
少なくとも姉に気づかれたことはわかっていた。
あの瞬間、目が合ったのだから……。
苦しくて何度も息を吐き、顔を覆う。
目が合った時の姉は女の顔というのだろうか、これまで見たこともない妖艶な表情でかすかに笑みを浮かべていた。
おそらくキスを交わしていたのだろう。
頬も唇も紅潮し、制服の首元が少し開いていた。
秋の夕暮れは早い。部屋はもう真っ暗だった。
廊下から差し込む明かりで、お盆の上の二つのグラスが小さな水たまりを作っているのが見える。
立ち上がってそっとドアを完全に閉め、電気を点ける。
真っ暗な部屋に籠っていたかったけれど、いずれ姉が来ることはわかっていた。
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