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姉は床の真ん中に置いてあるお盆を避けてこちらに来ると、私が腰かけているベッドに並んで座った。
ふわりと甘いコロンの香りがする。
姉がいつもつけているものだ。
それを避けるように、私はわずかに姉から離れた。
「さっきは……」
「さっきはごめん」
姉の言葉を遮り、先に謝った。
何も言われたくない、
何も聞きたくない。
無駄だとわかっている、せめてもの抵抗だった。
「覗いたわけじゃないの。これ、履いてたから足音がしなくて」
靴下を指さし、下を向く。
「わかってる。こっちこそごめん。あんなところを見せちゃって」
「……」
部屋が静かすぎて、沈黙がのしかかってくるように感じる。
沈黙しながら、私は姉に対して沸き起こる嫉妬心を懸命に消そうともがいていた。
小さな頃から姉はいつも私を守り、可愛がってくれた。
遼太郎が選んだのは他でもない、その姉なのだから。
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