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「そう? なら良かった」
そう言って姉は笑ったあと、明るいその声で私の心に大鉈を振り下ろした。
私の感情は私だけの問題ではなく、相手の迷惑になるのだと。
「遼太郎がね、そうじゃないかって気にしてて。もしそうだったら、彼にとって結構負担みたいだから……。そわそわされると、うちにも来にくいだろうし」
遠慮がちな優しい口調で次々と投下される言葉は、柔らかなオブラートで包まれているのが、かえって残酷だった。
その中に劇薬が包まれていることを想像させた。
遼太郎に気づかれていた。
遼太郎に迷惑がられていた──。
これまで私の悩みだった、遼太郎の視界に入れないこととは次元が違っていた。
私の努力は、彼にとって鬱陶しいものだったのだ。
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