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姉は私の気持ちに気づいているに違いない。
故意に私を牽制したのだ。
姉からしたら、姉妹で同じ相手を好きになるというこの事態を穏便に収めるにはこうするしかなかったとしても、姉のそんなダークな部分を見るのは初めてだった。
いや……初めてじゃない。
私は花火大会の出来事を思い出していた。
結局あれは、私に〝だらしない〟レッテルを貼ったようなものだった。
少なくとも遼太郎は私のことを尻軽で考えの浅い子供だと思っただろう。
姉さえきちんと本当のことを説明してくれていたら、遼太郎に怒鳴られることも、軽蔑されることもなかったのに。
いや、そもそもはぐれたのだって……。
「莉穂、ご飯よー」
何も知らない呑気な母の声が邪推を遮った。
食欲なんてない。
ご飯なんて食べたくない。
でも、私はいつも通りに振る舞わなければいけない。
姉以外の人間に、これ以上失恋を悟られてはいけないのだから。
涙が渇いた頬で、私はゆっくり立ち上がった。
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