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それからというもの、家ではあまり心休まる時がなかった。
特に姉がいる時は、常に演技しているような気分だった。
明るく、仲良く、これまで通りに。
嘘をつき通すために、毎日私はもう存在しない過去の自分を演じていた。
遼太郎が来る時は特に辛かった。
なるべく彼と顔を合わさないように気をつけていたけれど、毎回そうもいかない。
家にいる時は、母にお茶の運び役を任されてしまう。
そんな時はオーバーなほど足音を立てて二階に上った。
もう二度とあんな光景を見たくない。
けれど、さすがにそれはもうなかったし、慌てて取り繕っている様子もない。
もしかして、あれは私を諦めさせるためにわざと見せつけたのではないかとさえ思い、邪魔だった自分に苦しんだ。
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