初恋、そして封印-2

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「よう!」 部活を終えた夕方、ぼんやりと帰り道を歩いていると、壽崎くんに声をかけられた。 花火大会以降、壽崎くんとはたまに喋るようになっていた。 「あれっ、壽崎くんの家、こっちだっけ?」 「今日は今から塾なんだよ。あー、行きたくねぇー」 壽崎くんはスポーツはできるけれど勉強はからきし駄目ときている。 野生児のようにリュックを振り回しながら空に向かって雄叫びを上げる様子に吹き出した。 家に帰るより、学校の友達といる方がよっぽど気楽で楽しい。 「今年は高校受験だもんね」 「莉穂ちゃんは勉強できるもんなぁ。俺、向いてねーんだよ」 以前の〝及川さん〟から〝莉穂ちゃん〟とさりげなく呼び名が変わった。 人見知りする私と違い、壽崎くんは誰にでも屈託がない。
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