片思いから始まる関係

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大学4年間、喧嘩をしたり家出をしたりすることは何度もあったが、なんだかんだ俺達の同居生活は続いた。 本郷は高校を卒業しても、片岡や上木らとはたまに会っているようだったし、俺は俺で高校や大学の仲のいい奴らと飲みに行ったり遊んだりして、それぞれの生活を過ごしていた。 俺達の関係は特に何も変わらないまま、大学を卒業した。 それでもやっぱり、相変わらず俺は本郷が好きで、本郷は片岡が好きだった。 お互い働くようになり、同居生活も8年目を迎えた今年の夏、片岡から結婚式の招待状が届いた。 大袈裟に驚いた俺とは対照的に、本郷はやはり落ち着いていた。聞けば、すでに本人の口から報告を受けていたと言う。そんな素振り、ちっとも見せなかったのに。 彼女が出来た時もそうだったけれど、ずっと見つめていた相手の結婚報告を、どんな気持ちで聞いたのだろう。 心揺れて、戸惑うことはなかったのだろうか。 静かな瞳で新郎を見つめる本郷を盗み見る。その顔には嫉妬や嫌悪の感情はなく、むしろ優しく微笑むようなその口元は、純粋に祝福しているように見える。 俺が本郷の立場だったら、きっとそんな風には笑えなかった。息が苦しくて、痛くて、目を背けてしまうだろう。本郷が誰かと一緒になる姿を想像するだけで、心臓が潰れそうに痛んだ。 式も終盤に差し掛かり、2人の出会いの場面が映し出される。2人で出かけた旅行の写真や、記念日の写真がスライドで流れる中、最後に映し出されたのはプロポーズの写真だった。 色とりどりの大きな花束を抱え、潤んだ瞳でにっこりと笑う新婦と、その隣で少し頬を染めはにかんだ笑みを見せる新郎、片岡の姿。 周りでは感動して鼻を啜る音や、楽しそうに笑う声が溢れていた。 片岡はみんなから祝福され、幸せいっぱいの顔で式を締めくくった。
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