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季節は梅雨のはずなのに、雨らしい雨も降らないまま、七月を迎えていた。
プロジェクトはいくつものチームに分かれて作業を進めているけれど、今のところ大きな問題の発生はなく、おおむね予定どおりに計画は進行していた。
今日は終日、調査会社との打ち合わせや現場視察などで、遼太郎と二人で外出して いた。
日差しが強い季節になり、夕方になる頃には、お化粧が取れていようが構うゆとりもないほど、クタクタだった。
そもそもスケジュール自体がパンパンに詰め込ま れていて、西岡課長には申し訳ないけれど、エリート社員の〝普通〟のレベルをまざ まざと見せつけられていた。
「今日は直帰でいいよ。かなり回ったからな」
足を引きずる私を見て遼太郎が笑う。
顔を見上げると目が合った。
「俺は後から帰る」
遼太郎の部屋で待っていて、という意味だ。
無言でうなずいて、駅までの道を二人で歩く。
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