二人の時間-1

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「そういえば、このプロジェクト以外では何を担当してるの?」   話をそらすついでに、私は気になっていたことをたずねてみた。 「今は湾岸地区の橋の工事。本来の所属は橋梁部門だからな。プロジェクトのためにイノベーション本部に一時的に移籍しているだけだから」 「全然分野が違うんだね」 「ああ。ただ、大学で都市工学もやってたから、それで選ばれたんじゃないかな」 「どっちが楽しい?」   遼太郎は「答えづらいな」と私の質問に苦笑した後、続けた。 「それぞれ魅力が違うからな。今は湾岸が工期真っ只中だから、緊張感はある」 「湾岸ってことは、海の中に橋脚を立てるの?」 「そうだよ」 「あれって根元はどうなってるの? 浮いてるの?」 「浮いてねーよ。どんな橋だよ」 「丸太橋」   思い切り馬鹿にされた私がヤケクソで答えると、遼太郎は大笑いした。
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