二人の時間-1

2/33
1223人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
その日から、遼太郎と私の密かな関係が始まった。 それは、偶然に左右されたものが大きかったのかもしれない。 遼太郎の部屋で朝を迎えた翌週のことだった。 私は少し早めに退社して、大手町の書店に一時間ほど立ち寄った後、地下道をホームに向かって歩いていた。 すると、前 方に遼太郎の姿を見つけた。 正確にいえば、見つけたのは遼太郎のほうが先だった。   惹かれる気持ちを押し殺して小さく会釈し、半蔵門線のホームに足を向ける。 そんな私を、「行くな」という短い一言が止めた。 まるで強く引き合う磁 石ように、それ以上、抗えなかった。 人目を忍びながら、遼太郎と同じ電車に乗る。   そして、暗黙のうちにそれは日常のことになっていった。  
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!