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黙っている私に、西岡課長が畳みかけた。
「及川はそれでいいの?」
「……」
「本心を言わなくていいのか?」
「言ったら……彼の負担になります」
私はあの夜に、遼太郎の弱り目につけ込んだ自分の罪深さを痛いほど自覚していた。
私が彼に好きだと告げてしまえば、いつか姉が遼太郎のもとに戻ったとき、遼太郎は私に対する責任と姉への愛情の板挟みになるだろう。
身体の関係を持ってしまった今となっては気休めにしかならないけれど、せめて利害の関係として捨て去るしか道はない。
でも、それが言い訳だということもわかっていた。
本心は少しでも彼のそばに居たいから──。
私はエゴの塊だ。
西岡課長は黙っている。
私の返答に納得していないのだろう。
課長が返事をしないのはそういう時だ。
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