二人の時間-1

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しばらくして、課長は少し遠い目をして語り始めた。 「再会したことには意味があるんじゃないかな。誰かを好きになることも、忘れられないことも。起きてしまったことには全部意味があると思うんだよね」 それから課長は煙草の箱を振って空なのを確かめると、ポケットから新しい箱を取り出した。 「僕の事情、詳しく報告してなかったね。前に少し言ったけど、今、離婚手続き中なんだ。紙っぴら一枚を役所に出して終わり、でもなくてね。共有資産の名義変更とか、ややしいんだよ」 やっぱり、修復はできなかったんだ……。 課長の手が新しい煙草の箱を開けるのをやるせない思いで見守る。 「僕は奥さんが好きでね」 そう言って課長は照れたように笑った。 穏やかな笑顔がかえってこちらの胸を刺す。 「出会った当時、彼女には密かに好きな男がいた。分かってたんだけど、あれやこれやと頑張って結婚に持ち込んだ。どうしても手にいれたかったんだ」 いつも余裕のある課長がそこまで誰かを好きになるなんて想像できない。 意外な一面に、私は話に聞き入った。
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