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仕事が終わると、私たちは毎晩の ように身体を重ねた。
遼太郎の部屋だけでなく、私の部屋で会うこともある。
帰り時間や外出先から直帰の場合など、状況によっていろいろだった。
そのうち、遼太郎から部屋の合鍵をもらうまでになった。
倉上本社の仕事と掛け持 ちしている遼太郎のほうが帰りが遅くなることが多く、私が合鍵を持っていたほうが便利だったからだ。
世間では身体で結ばれた関係をセフレと呼ぶのかもしれないけれど、私たちはお互 いにほかの誰かでは満たせないものを補い合っていた。
だから、私はこの関係をセフ レだとは感じていなかった。
私には遼太郎でなければならない理由が、遼太郎には私でなければならない理由 がそれぞれあった。
ただ、どれだけ抱き合っても、私たちが「好き」という言葉を口にすることはない。
自分の恋の宿命を、最初から私は静かに受け止めていた。
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