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「課長が大変なときに、本当にごめんなさい」
頭を下げた拍子に、大粒の涙が膝に落ちた。
一緒にいられる幸せだけを受け止めようとしてきたのに、今まで押し込めてきた身代りの関係に甘んじる苦しさが、一気に溢れてくる。
「泣くな、泣くな」
「すみません。こんな話を聞かせた上に、見苦しくて、本当に……」
下を向いて顔を隠しながら慌ててポケットを探り、ハンカチを取り出した。その拍子に地面に転がったボトルが砂を払われ、私の横にコトンと置かれた。
「ヨシヨシしてやりたいけど、それやるとたぶんあいつに殺される。このベンチ、事務所から見えるんだよなぁ」
そう言ったあと、課長がいきなりこちらを向いて、大量の煙を吐き出した。
「うわっ、何するんですか! もう課長最悪」
泣きながら煙を避けて猛抗議する。それを見て課長は笑っていた。
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