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普通の社内恋愛ならば、きっとこっそり目配せし合ったり、ときには会議室でキス したり、そんな甘酸っぱいハプニングに満ちたものになるだろう。
でも、私はそんな関係でなくても構わなかった。
恋愛感情で結ばれた関係ではない せいだとしても、私はストイックに公私を切り替える遼太郎の姿がとても好きだった。
夜ごとに見せる情熱とは真逆に、会社での遼太郎は私に厳しかった。
だから、私も仕事に集中できた。
同じ目標に向かって全力を尽くすことは、その後 の二人の時間をいっそう濃密なものにしているようだった。
毎夜抱かれても、私は遼太郎との行為に慣れることはなかった。
遼太郎の腕の中で 私はいつも余裕がなく、どんなに主導権を握ろうと頑張っても、簡単に負かされる。
私に触れる遼太郎の手は、す べてを味わい尽くそうとするかのように貪欲で、それでいて切なくなるほど優しかっ た。
それが誰に向けられたものなのかを知っている私は、遼太郎の欲望だけを受け止めた。
でもそれは、私を見つめる眼差しが優しければ優しいほど、私に触れる手が甘け れば甘いほど難しかった。
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