第10話 二人の時間-2

二人の時間-2

七月も下旬になると、駅や街のあちらこちらにお祭りや花火大会のポスターが目立つようになる。

再開発地区に近い多摩川でも、毎年八月下旬に花火大会が催される。
多摩川を挟み、東京都の世田谷(せたがや)区と神奈川県の川崎(かわさき)市が両岸で花火大会を同時開催するという、豪華なものだ。

「今年は八月十九日か」

外出を終え、ついでに夕食も済ませた遼太郎と私は、路地に貼りだされたポスターの前で足を止めた。

「毎年すごい人出らしいね」

地元の街は今から盛り上がっている．
再開発地区もその賑わいの中心になるだろう。

「Ａ地区の第一棟のせいで花火が見えなくなる人、いそう」

ポスターを見ながら私が漏らした正直な呟きに、遼太郎が苦笑した。
私たちプロジェクトチームが今揉めている件だ。