二人の時間-2

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誤字だらけで突っ込みどころ満載の立て札や、通行人に吠えまくる犬がいる家など、他にも二人が覚えているものはたくさんあった。 「あの岩も立て札も、まだあるかな」 「犬はさすがにもういないだろうな」 「寂しいね。昔は怖くて仕方なかったのに」 あのワンちゃんに会いたいな、と私が呟くと、遼太郎が笑って空を仰いだ。 「俺もずっと帰ってないな」 電車ですぐなのにな、と笑う遼太郎を見上げる。 お姉ちゃんとは会わないの? その質問を別の言葉にすり替える。 「今年のお盆休みは帰るの?」 「無理だろ。言っとくけど、今年の夏はほとんど休み無しだぞ」 「ひどいよ」 膨れてみせたけれど、本当は嬉しかった。 遼太郎といられるなら、休みなんてなくていい。 でも──。 私の心は、月のように欠けている。 姉と家族を裏切る恋は、故郷をさらに遠くする。
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