二人の帰る場所-2

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事務所に着いたのは、もう夜の十時に近く、辺りはしんしんと冷えていた。 駅を飛び出し、事務所横の公園まで小走りにやってきた私は、三カ月ぶりのプレハブ建てを見上げて安堵の白い息を吐いた。まだ明かりは点いている。 遼太郎は居るだろうか? 鉄板で出来た外階段を昇り、一つ深呼吸をしてから事務所のドアを開ける。 「失礼します。お疲れ様です」 中には誰もいないように見えたけれど、高く積み上げられた書類の山の向こう側から、「あら」と市川さんの声が聞こえた。 「おかえりなさい」 書類の山から顔を出した市川さんがこちらに手を振った。 「ちょうど良かったわ。帰りたいのに帰れなくて、困ってたの。一人まだ外出中なのよ。その人に鍵渡してくれる?」 私がこんな時間にやってきたことに疑問も挟まず、市川さんはやれやれといった風で机の片付けを始めている。
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