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事務所から遼太郎の部屋があるお茶の水までは、二人ともあまり喋らずにずっと手を繋いでいた。
急いで出張の仕度をしたせいで手袋を忘れた私の指を、彼の大きな手が包む。
気持ちを確かめ合うまでは身体を重ねてばかりだったのに、今は寄り添っているだけで満たされていた。
それは彼も同じだったのかもしれない。
あんなに焦って帰ったのに、部屋に着くと私たちはこの至福の時間を急ぐのがもったいなくなり、ベッドではなく久しぶりに一緒のお風呂に入った。
じゃれながら洗い合い、湯船で温まりながら離れていた三カ月の思い出話をする。
遼太郎は最初、かなり痩せた私の脇腹を見て辛そうな顔をした。
「どうしてこんなに……?」
「寂しかったから……」
「ごめん……泣くな、泣くな」
今までのことを思い出して彼の胸で泣いているうちに、だんだんとのぼせてしまい、私は浴槽の縁に座らされた。
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