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どうして……?
心の準備がまったくできていなかった私は後退った。
三カ月ぶりの遼太郎はグレーのコートを着込んでいて、驚いた表情で私を見つめていた。
「お……お疲れ様です」
必死で振り絞った声は小さく擦れていた。
「どうしてここに?」
三カ月ぶりに聞いた彼の声はたった一言なのに、泣きそうになる。
この声は思い出じゃない。
この声は幻じゃない。
「西岡課長が、プロジェクトの経過を見て来いって……」
西岡課長の名前を聞いた遼太郎の表情が変わった。
「聞きたいことがある」
早くも過去の清算のときを迎えてしまう予感に、私はまた一歩、後退った。
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