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自分の耳が信じられなかった。
私は今、何を聞いたのだろう?
「好きだ」
その声はもう一度聞こえた。
「好きだ。どうしてもお前を忘れられない。一度は忘れたはずなのに、今回は無理だ」
遼太郎は苦しそうに顔を歪めて喋り続けた。
「どれだけ仕事しても、何をしても、苦しくてたまらない」
愕然としながら首を振った。
嘘だ。嘘だ……。
だって、お姉ちゃんと抱き合ってたじゃない。
市川さんと課長が一緒にいるからって激怒したじゃない。
同じ人に何度も失恋し続けた私は、今聞いた言葉をなんとか否定しようと理由を探した。
首を振り、後ろに下がろうとしたけれど、ファイルの山に阻まれる。
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