お重箱とお味噌汁。

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「ねぇねぇ、芽生ちゃん!昨日リクしたクリームコロッケ!作ってきてくれた?」 「うん。」 「やったー!有り難う!」 美羽ちゃんは両手を上げて満面の笑みを見せると、ぎゅうっと私に抱きついてきて、 (わわわっ。) 思わず身体が固くなってしまった。嬉しくて、恥ずかしくて、言葉では表せない感情が押し寄せる。 「ねぇねぇ芽生ちゃん!今度、料理教えてよ!料理上手になってね、先輩の胃袋つかむの!」 「先輩?」 「バスケ部のエースの相葉(あいば)先輩!もうね、ちょー格好いいんだよ!」 「そうなんだ。」 「芽生ちゃんも放課後一緒にバスケ部見に行こうよ~。」 「駄目に決まってんだろ。」 すると、矢庭に後ろから声がした。 「『駄目?』なんでよ、ツッキー。」 「何でも!大島、芽生を勝手に連れ回すなよな。」 「いーじゃん、ケチ!女子友のトークに割り込んでこないで!」 (女子友…。) 美羽ちゃんと皐月くんが口喧嘩をしている間、それでも私の腕を抱きしめて離さない美羽ちゃんに、その言葉に、思わずまた涙腺が緩みそうになった。 今朝感じた、ジンとする熱い気持ち。鼻の奥がツンとする。 (嗚呼…私、クラスの一員になってる。)
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