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「うん、どうぞ。」
「やった!有り難うな。マジ美味いよコレ!神!」
打って変わって、ニッと無邪気に笑むその面立ちに、ついドキリとしてしまった。
「ありが、とう。」
「で?何で教室で食わねぇの?休み時間も一人でいるじゃん。」
「その、…人見知りで。」
「ふーん。…え!?じゃあ俺、ここいたら迷惑!?」
「あ!ううん。大丈夫。そう言うことじゃなくて。…その、本当はみんなと一緒にご飯食べたいんだけど。私、一人っ子だし、人付き合いが苦手で。熱出して入学式も休んじゃったから、中々みんなの輪に入れなくて。」
すると森本くんは、黙って私の話を聞いてくれた。聞いて、私の膝元にある紙パックのジュースに手を伸ばす。
「………。大丈夫だよ。」
「え?」
「最初の一歩が踏み出せれば、木ノ下さんなら直ぐにみんなと仲良くなれるよ。」
「そう、かなぁ?」
「ん、クラスの連中、いい奴らだよ。だからさ、自分から関わりを絶たないで、堂々と教室で昼飯食いなよ。」
「…考えてみる。」
「あ、てかごめん。さっき勝手にジュース貰っちゃった。」
「え?」
「間接キス。」
(間接キス?)
頭上に浮かぶ疑問符。目の前には、ニッと悪戯な顔をして笑う森本くん。
(間接キス?キス?…キス!?)
漸く意味を理解する。初心だと思わないで欲しい。前述した通り、私は人見知りで恋愛経験も皆無なのだ。
「………。」
しかし不思議だ。初めて話した人、学年の王子様で到底手の届かない人。なのにどうして、心地よくこんな風に胸の内を語ってしまえたんだろう。
(ああ、きっと森本くんの人気は容姿だけではないんだな。…羨ましい。)
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