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私は、戸惑いつつお弁当箱を開ける。と、そこには、
「何これ?出し巻き卵に、アスパラとチーズのベーコン巻き、甘露煮に昆布巻き!?メーンはちらし寿司!」
ひょいっと顔を出してきたのは大島美羽子(おおしま みわこ)さん。髪の毛がふわふわした、いかにも可愛い女の子だ。
「え?何これ!木ノ下さんが作ったの!?全部!?」
「てか弁当でちらし寿司って俺、初めて見たよ!」
神崎さんと下谷くんが勢いよくお弁当箱に顔を近づけてきた。そんなに珍しいものだろうか?困惑しながら口を開く。
「あ、お酢が入ってると食べ物が傷まないので。」
「てか、めっちゃ和だな!」
「ねぇねぇ、木ノ下さん。ベーコン巻きと私の唐揚げ交換しよう~。」
「あ、はい。」
大島さんに声をかけられた矢庭、ひょいっと出し巻き卵を口に放り込んだ男子生徒がいた。下谷新(しもや あらた)くんだ。下谷葵くんの、双子のお兄さんである。
「やばっ!何これ!おふくろの味!美味!」
「あ゛!新、何、勝手に食ってんだよ!芽生の玉子焼きは俺んだぞ!」
「知らねぇし。皐月の弁当じゃねぇし。」
森本くんに促されて席に座ると鼻の奥がツンとした。
(…私、みんなと一緒にいる。)
私が感動で涙腺がゆるまないように耐えていると、神崎さんがあることに気がついていた。
(あれ?皐月くんが女子の名前呼ぶの初めてじゃない?…ふーん。)
そうしてニヤリ、クールビューティな顔が、面白い遊びを見つけた子供のように笑むのだ。
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