Ⅰ. もう一つの物語 パラグラフⅠ:22年前、襲撃

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 夜間の周辺監視のため、鳥箱に模して数カ所に設置した赤外線暗視スコープのうち、小屋を抱くように広がる山林の高木に設置した二台が、山林を越えた側の旧道に停車するミニバンを捕えている。  車がいる位置から先は、大雨や強風による土砂災害が起こりやすく通行止めになって久しい。  その告知看板地点を停車場にしているということは、車中にいる者は一般人ではない。  ザックが愛犬と一緒に寝ている隣室のドアを少しの間見つめ、梶井由宇一郎は襲撃犯をよこしそうな相手を思い浮かべてみた。多過ぎて苦笑する。  どっちが標的だ!? 俺かアイツ(ザック)か? それとも両方か? 冷静に思考するよう自分に言い聞かせる。  車の両側のドアが開き、男が二人降り立った。武装済みだ。二手に分かれ辺りをくまなく検分する様は、野戦馴れした“プロ”のもの。  あと何人いるか定かではないが、最低でも4、5人はいるだろう。山林に分け入り、背後から襲撃する算段か。  ノーパソに映し出されるリアルタイム画像を確認した梶井は、グッと腹に力を込めた。考えられる可能性は3つ。
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