Ⅰ. もう一つの物語 パラグラフⅠ:22年前、襲撃

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 梶井は装着した超小型マイクに向かって話し出した。 「染谷さん、いまどこらへんよ? 武装した男数人が旧道側からこっちに向かってるんだけど。一応訊くけど、アンタの連れじゃないよね!?」 「――っ! クソっ! いらねぇチャチャ入れてきやがって! どこのどいつだ! 心当たりは!? なんでこんなに早く居場所が割れた!?  いいか梶井、よく聞け! 俺ぁおまえなんかどうなっても構わんが、ガキは護らにゃならん。なにがなんでもアイツを護り通せ! 俺が行くまでな! それがおまえの果たすべき責任だ! 分かったな!!」 「長くはもたないよ。急いでパパ!」  噛んでいたもどき煙草を吐き出し、染谷はアクセルを踏み込んだ。タイヤが軋んでギュルルルルと鋭い叫び声をあげる。一気にスピードが加速する。 「由宇次郎、由宇次郎……ザック! 起きろ! おまえもだ、スタイラー」 「………なに、ユウイチロ?………なんなの………」  眠い目をこすりながらザックが訊ねる。スタイラーはベッド脇に敷いたマットの上で、何ごとかと首をもたげている。 「死にたくなけりゃ俺の言う通りにしろ、いいな!」
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