4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 翌日、ちょっと寝過ごした僕は急いで身支度を整え、とりあえず何かかきこもうと階下に降りた。  由宇次郎はすでに出かけたあとだった。2時間前だから8時か……夜型人間のアイツにしたら相当早い。  あの刑事が由宇次郎を訪ねてきてから、僕らの、普通とは言い難いけどそれなりに平穏な日常が、ほんの少しだけど歪んだ。ああいうのをして嵐を呼ぶ男っていうのかな? いい迷惑。 「何食いたい?」 「モーニングでいいよ」 「焼き魚定食?」  ぶっ、何それ、カフェで出すモーニングじゃなくない? 「ウチのお客さんは港湾倉庫の肉体労働系がほとんどだからな。やってみたら大好評なのよこれが」  いや、分かるけど。定食屋じゃないのにそこまでする? おっちゃんたち別に望んでないと思うけど。臭いが染みつくよ? 「じゃあそれで」 「あいよ。特別に自家製プリンつけてやるからな(笑)」
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