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赤煉瓦を敷き詰めた遊歩道の両脇は桜並木だ。花の頃は過ぎつつあり、誇らしげに咲き乱れた薄桜が竟の舞を繰り広げている。
ひとひらひとひら、ゆるりゆるり、柔らかに細やかに。
散開する薄花桜のなか、パノプティコンを目指し歩を進める人はまばらだ。
「かくも美しき終焉、だね~。“桜花時は過ぎねど見る人の恋ふる盛りと今し散るらむ”」
「ああ?」
「何でもねーっす、隊長殿」
後部座席に由宇次郎を乗せた覆面パトが、桜花の舞い散る遊歩道のゲート付近に停車している。
運転席にいるのはあの男――染谷というらしい。公安警察特捜部諜報課課長、一般警察でいうところの警視にあたるという。
あいかわらずのくたびれた革ジャンの下に、アイロンのあてられていないヨレヨレのシャツを着、裾の擦れたジーンズといういでたち。バイカーブーツを履いた足を組み上げ、軸足をひっきりなしに揺らし、禁煙用のもどき煙草を噛んでいる。
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