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由宇次郎のほうはというと、全身黒づくめにオレンジ地に金ラメ入りのネクタイ、中折れ帽に濃いサングラス……うん、その場にいたら僕、間違いなくポッカーンだよ。
何? ケチな詐欺師かポン引きにしか見えない……あ、ケチな詐欺師かポン引きっぽいんだった。
「染谷さ~ん、これってどうなの? 人に頼み事しておいて手錠ってさぁ……」
「うるせぇ、少し黙ってろ。つか、脚下ろせ、もうちょいソレっぽくしろや。移送されてる感じを演出しろ」
「え~(笑)」
「“え~”じゃねぇ。遊びで来てんじゃねーんだぞ」
「イヤ、そんなつもりは微塵もないっす。アンタと二人っきりで“登城”とか、遊びでもゾッとしないんで。
だいたいさー、アンタの依頼受けるのにわざわざ“城”に来させられる意味が分かんないんだけど。
そもそも? 消息不明のお友達(?)の追跡なんて、アンタらが自分でやりゃぁいいことじゃん。何で…………おわっ!」
ギュルルルルという軋み音とともに車が急発進したため、由宇次郎は前部シートにつんのめりそうになるが、脚を上げていたのとドアに繋がれていたのとでそれを免れる。
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