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「……あー、いいってそんなんいつでも。それよかさ、俺、前からおまえに見せたかった場所があってさ」
僕はアイツに打ち明けるほうを選んだ。真宮が予想以上に喜んでいるように見えたので、この選択で正しかったんだと思った。もっと早く気づくべきだった。イケてないなー、僕って。
「けど、この間っからそこにヘンな女がいてさ。何かこえーんだ、コレが……」
橋のたもとでアイスキャンデーを売ってるオッサンがいたので、僕はクリームソーダ味、真宮はシトラスヨーグルト味を買って、二人してチャリを引きながらのんびり歩いた。
今日は天気が良かったから、夕方の陸風も気持ちがいい。 “洗濯物”の姿は今のところ見当たらない。
僕と真宮はいつもの場所――僕がつねづねパノをあおぎ見ている場所――まで行き、あの建物のどこかにいるはずの父親の話をした。
真宮はそっかー、それでかぁとか何とか言ってたけど、実父が刑務所にいるって聞いても別段気にしないみたいだった。
僕が思っているよりもずっと――何だろ、いいヤツ、みたいな?
地に足が着かない感覚から僕がいつまでも脱け出せないのは、本気で脱け出る気がないからかもしれない。
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