4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

100/172
前へ
/965ページ
次へ
 実行委員会はまずガイドライン作りに着手した。精子提供者は10段階評価で“7以上”の判定を受けた者に限られた。  このレベル分けは、大学の研究室・民間企業の協力を得て作成した28項目にもおよぶパーソナリティテストに、IQ、EQ、血液型、家族構成、既往歴、収監前の勤務先、職種および役職、実績、収監理由(罪状)までを加えた総合評価によって判断された。  そうして、プラスイメージのある情報をいくつか抜き出し、SNSを利用しての大々的なプロモーションが展開された。  つぎに囚人たちに精子提供話を持ちかける場を設けた。  選別した候補者と個別に面談し、提供をしぶる相手には見返りとして、司法取引をちらつかせることも少なくなかった。  しかし、これは提供予定者にいいように利用されてしまう。たとえば、特定の犯歴の削除やデータベースそのものの抹消などはまだかわいいほうで、形式的な書類提出のみで仮釈放を要求したりする者までいた。
/965ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加