4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 集められたスパーム(精子)は、専用の管理施設に送られ、厳重管理のもと、厚生労働局直轄の研究機関と民間企業の協力を得て、詳細な検査が行われた。  提供者本人はもとより、3親等までの血族姻族に加え、顔を合わせたことすらなさそうな遠戚にいたるまで、秘密裡の調査が行われた。遺伝的に問題のありそうな精子はすみやかに排除された。  こうして、クォリティ・ギャランティード・スパーム(Quality Guaranteed Sperm)(品質保証精子)――悪ふざけでも何でもなくそう呼ばれていた――はぞくぞくと実行委員会のもとに集められた。 ・費用対効果はいかほどなのか? ・応募してくる女性ははたして何人いるのか?    われわれの疑問はいまだ晴れないまま――。  マスメディアは懐疑的な報道を繰り返すも、明らかにトーンダウンした論調に、逆に糾弾されたりした。
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