4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 具体的には次のような内容だった。  出産費用の助成金額アップ、希望者には代理母を斡旋、母子家庭支援の大幅見直し、住宅扶助、幼児教育学者監修によるシステマティック保育導入園への優先入園権 and so on……。  手取り足取り、過剰なまでの気配りっぷりに、ただただため息が出る。  子供を育てる上で、自己負担が大幅に軽減される――通常では考えられない充実した環境下で、理想の母親になれるチャンスだ――。  あまりに公平さに欠けるこうした特別措置にも、マスコミは予定調和的に噛み付いただけだった。  裏では案外、政府と共謀していたかもって疑ってしまう。  不安や敵対心に煽られながらも、やむを得ないという心理を最大限に引き出された僕らは、流れに従わざるを得ない方向へと導かれていったのだった。
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