浮遊体（少年少女）オン・ザ・ブリッジ――未完の橋――

４. もう一つの物語 パラグラフⅣ：或は真実の物語

　三文大衆誌が嬉々として取り上げた飛ばし記事に、どの程度信憑性があったのかは今となっては判らずじまいだ。

　提供スパームが知的犯囚のものであるという事実は、プロジェクトの初期段階でおおやけにされていたし、最高レベルの技術を投入して、可能な限りの予防策はとってあった。

　にもかかわらず、政府はこうした“恣意的ビラまき行為”に対策を講じていなかったばかりか、拡散する動揺を歯止める方法も打ち出せなかった。

　犯罪者の精子なら異常もあり得る――科学的根拠のまったくない、一方的で偏見に満ちた説でも、人は簡単に踊らされてしまう。

　風評に臆した女性たちは次々連絡不通となり、そのまま身を潜めてしまった。

　自ら望んで受精した卵を拒絶したのだ。

　スパーム提供は三期まで進んでいたため、その数は相当数に上った。