4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 気持ちは分からなくもないよ。  でも、一番の被害者な僕らから言わせれば、無責任極まりない母親未満の女たちやマスコミ、こういう事態を憂慮していなかった政府に対して、怒り以外のどんな感情を抱けと?  僕らは好まざるして“親なし子”にさせられた。  僕が心の奥底で女性を拒絶している理由はこれだ。  だって許せないだろう?  子どもを欲しておきながら産む前に放棄して逃げたんだから。  しばらくして、件の記事は“やらせ”だったことが発覚した。  スパーム提供者の犯罪への加担と、生まれた子どもの先天性疾患のあいだに関連性はなく(あたりまえだ!)、通常の妊娠・出産でも数パーセントの割合で起こりうる疾患であること、素因は父方母方どちららにも認められることなどが、内外の著名な医師らも参加しての公開検証によって立証された。  こうして、騒動自体は終息に向かった。
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