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救命士の主張はこうだった。
現場は標高1000mを超える高原、初秋に入った現在の日中の平均気温は12~9℃、朝夜の冷え込みはさらにきつく5℃前後まで下がる日もある。
「きょうの日中の最高気温は11.3℃でした。20時の予想気温は7.4℃、日付が変わる頃には6℃前後まで下がるとのことでした」
「だから、僕らはそのつもりで来ました」
彼らだけじゃない、きょうのメンバー全員が平時より厚着で来ているはずだ。
招集にあたって必要な情報は、全員が瞬時に共有できるようシステム構築されている。
そのなかには現地の天候・気温なども当然含まれている。作業の進行に直接影響するため、もっとも重要な情報といっても過言ではない。
脇に脱ぎ捨てた厚手のジャケットに視線をやり、彼は続けた。
「にもかかわらず、現在、周辺の気温は14℃です。日中の最高気温より高い。おかしいですよ、こんなの。あり得ない」
言われてみれば、染谷も車から転がり出るように降りたったとき、やけに蒸す気がした。
じんわり汗ばんでくるのを疑問に思わなかったのは、そんな余裕がなかったのと、気持ちが昂っていたせいと合点がいったからだった。
切迫した事態にジリジリし、極限の緊張状態が続いた結果、大量のアドレナリンが分泌されたせいだと思っていたのだ。
だが、にわかには信じがたいことだが、ほかに原因があったなら――?
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