4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 はるか彼方を見据えている様子の男の手には、拳銃が握られている。  ゆっくりと銃口を顎にあてがう。  僕らがちょっ! 待っ、えぇっ! とか言ってる間にバン!  彼は躯を大きく後ろに仰け反らせて果てた。  僕は………人の鮮血があんなふうに吹き出すさまを、TVドラマや映画以外で初めて見た。  どころか、人が死ぬところを見たのも初めてだ。  男の身体が力を失って傾いでいく様子が、コマ送り再生した映画みたいにつぎつぎ脳内を巡っていく。  僕の目がカメラの連射モードになったみたいだ。  しかも超鮮烈な“赤”以外、すべての色が失われている。何だよこれ? 何だっていうんだよ、いったい!
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