4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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「へー、この中ってこんなんなってたんだねー。  やっぱ一回くらい入っておくべきだったかなぁ(笑)」 「黙ってろ」 「でも、このエレベーターって、監視カメラもマイクも仕込んでないよね?  秘密活動用(・・・・・)なんでしょ?」 「ムダに敏いヤツめ」 「どーいたしまして」  パノプティコンは地上わずか17階。  天空に挑みかからんばかりの超高層タワーを擁するシティとは、高さでは比べものにならない。  長い桜並木が続く遊歩道に始まり、円筒形の本建物を核にして、周囲に放射状に植樹された灌木や、等間隔に鎮座するテラコッタの寄せ植えが美しい。  手入れの行き届いた芝生は陽光に色濃く映え、一種理想郷のように見えなくもない。  本建物を含めたこれら敷地内の整備は、服役囚の仕事の一つとして割り当てられている。  とくにガーデニング作業は人気が高く、プロのガーデナーの指導のもと、生き生きと作業する様子が垣間見える。
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