4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 そんなパノプティコンにあって、収容者はもちろん、職員でさえその存在を知らされていないフロアがある。  一部の公安警察関係者と監視センターの三位以上の上級刑務官だけが、護送されてきた“特0収容者(トクゼロ)”の取り調べを行う時などに使用するフロアだ。  西品川臨海高等刑務施設北ゲートと小さく表示された、遊歩道の反対側に位置する驚くほど寂れた入り口で、染谷が車のウィンドーをほんの数cm下げる。  すると、入出所管理官が無表情のまま、18と大きく番号が表示されたカードを寄越した。もちろん入所記録も取らない。 「俺ってVIPなわけ?」 「おまえみたいなヤツ、パンピーどもに晒せるかってんだ。危なくてしょーがねぇ」 「あらら、スゴイ言われよう(笑)」  直通エレベーターが17階で停止する。公表上の最上階だ。  降り立ったフロアは窓をはじめとして、外界とリンク可能なものが一切ない。  白の大きなゴチック体で18と表記のある壁や天井は、フッ素樹脂加工したアルミニウム建材が使用されおり、床はポリカーボネイト、各会議室の自動開閉扉はスチール素材でできている。
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