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「もし、ですよ? この局地的気温上昇が何らかの超常現象――未知の巨大エネルギー放出とか――にともなう自然共鳴に起因するとしたら?
特定することはまず不可能ですが、彼(と、梶井の方へ首を回す)はそのせいで……人の力ではコントロール不能な何かに呑まれ、あのような状態に陥ったと考えるのもありかもしれない、そう思ったんです」
『………ハァ。科学的に説明不能で人力のおよばない何かに呑まれただぁ? 突飛にもほどがあんだろうよ、ったく。莫迦も休み休み言え。なんでもかんでも謎めかせりゃぁいいってもんじゃねぇぞ』
嘆息しながら視線を落とすと、手を引いている少年のつむじが目に入った。
実を言うとほんの数ヶ月前、染谷はその科学的に説明不能なものを目の当りにしているのだ。
どころか、それを言うならこの少年――ザックという存在そのものが、科学的に説明不能ということになる。
あれを見る以前の染谷は、そういったものやことには懐疑的だった。
それはそうだろう。得体の知れないものをたやすく信じ込んでしまうようでは、警察は務まらない。すぐに転職を考えたほうがいい。
一方で、自分の目に映し出された光景を受け入れられず、真っ向否定したり歪曲したりするようでは、見たいものだけ見て捜査をするに等しく、やはり転職を考えなければならなくなる。
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