4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 ついでながら言っておくと、佐伯と由宇次郎(ザック=ザカリアス・ローランド・ヒラー)が染谷を介して初顔合わせしたのは、染谷と佐伯の初会遇からちょうど7年後、由宇次郎14の夏だった。  そして以降、由宇次郎が直面するあらゆる事態に、佐伯の豊富な人脈が余すことなく活用されることになる。 「で? かつての上司が再登場して、アンタに何をしろって?」  ズズーッと湯のみの中身をすすりながら訊ねる由宇次郎。  染谷は由宇次郎が腰を下ろしている長テーブルと、通路を挟んで反対側に位置する長テーブルに半身を預け、いかにもこと有り気なふうに言った。 「組織てぇのはな、棚上げしている問題がわんさかあるんだよ。奴さんはそれを整理しようと考えた。迷惑な話さ、誰にとってもな。  とっ始めはまず、マスコミに嗅ぎ付けられると不都合な案件の処理だ。  あンの野郎、〝よしなに〟のひと言で、過去10年分の厄介ごとを一塊にして、豪速球で投げつけてきやがった。  ……っとに面の皮が厚いというか、人を人とも思わねぇというか」
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