4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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「記憶に新しいのは約一年前、瀬尾パトリック捜査官が担当した案件だ。3人目……髪にメッシュの入っているヤツだ。  新興エネルギー開発会社『バイオセノーシス』の不正――所得隠しに始まって、悪質な水増し請求、ダンピング、海外での違法操業等何でもござれだ――これらの実体を掴むのが目的だった。  瀬尾パトリックは委託業者に成りすまし、8ヶ月に渡り、バイオセノーシス本社に出入りしていた。センシティブなケースだったがひとりで乗り切った。  任務は無事終了し、通例にしたがい、本人から長期休暇申請が出ていた。  エリの件でおまえもよく知っているだろうが、長期潜入後、自分を取り戻すのには時間がかかる。  任務から解放された捜査官がもとの生活を取り戻す際に重要なのは、言うまでもねぇが、家族水入らずで過ごす時間だ。  瀬尾の申請もすぐに受理された。彼は家族を連れて生まれ故郷のブラジルに帰った。ちょうどカーニバルの時期だったしな」
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