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「だが今月初めになって、奥さんから局に連絡が来た。どうしても連絡を取りたいから、夫の現在の潜入先にアクセスして欲しいってな。
俺たちは全員???さ。瀬尾は妻子と数週間休暇をともにした後、次の任務のスケジュールが前倒しになったと言って、その場で家族と別れたらしい。
次の任務など存在しちゃいないし、連絡を取ろうにも、電話もメールも通じやしねぇ」
「……ふぅん?」
会議テーブルに脚を乗せ、パイプ椅子の背に凭れきってスクリーン上の瀬尾パトリックの写真を表情なく見つめる由宇次郎が、両手を後頭部で組んで先を促す。
染谷はちょうど彼の頭頂部を見下ろす位置から、やはり無表情にスクリーンを一瞥すると、力なく息を吐きながら言った。
「文字通り雲隠れ。どこにもいやがらねぇのさ」
「消えちゃったんだ!? 確かに妙な話だねぇ」
「詳しい情報はファイルを読めば分かる」
「紙のファイルね」
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