4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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「だが今月初めになって、奥さんから局に連絡が来た。どうしても連絡を取りたいから、夫の現在の潜入先にアクセスして欲しいってな。  俺たちは全員???さ。瀬尾は妻子と数週間休暇をともにした後、次の任務のスケジュールが前倒しになったと言って、その場で家族と別れたらしい。  次の任務など存在しちゃいないし、連絡を取ろうにも、電話もメールも通じやしねぇ」 「……ふぅん?」  会議テーブルに脚を乗せ、パイプ椅子の背に凭れきってスクリーン上の瀬尾パトリックの写真を表情なく見つめる由宇次郎が、両手を後頭部で組んで先を促す。  染谷はちょうど彼の頭頂部を見下ろす位置から、やはり無表情にスクリーンを一瞥すると、力なく息を吐きながら言った。 「文字通り雲隠れ。どこにもいやがらねぇ(・・・・・・・・・・)のさ」 「消えちゃったんだ!? 確かに妙な話だねぇ」 「詳しい情報はファイルを読めば分かる」 「()のファイルね」
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