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目の前に積まれたファイル束の一番上の表紙を指で摘み上げた由宇次郎は、中をのぞき込む仕草だけして、渋面の染谷を目だけで見上げた。
「で? さっきの質問の答えは? 俺に何をしろって?」
染谷はジャケットの内ポケットから“もどき”ではない煙草を取り出し、一本銜えると火をつけた。
「いるか?」
「んや、その煙草キライ」
「可愛げねぇな」
「そりゃど~も(笑)」
空気清浄器がセンサー作動し、煙を絡めとって行く。自分に背を向けスクリーン中央にゆるりと移動していく染谷は、黙したまま紫煙を吐くばかり。
椅子に預けていた我が身を引きはがし、ブーツについた小さなハネ汚れを指ではじいた由宇次郎は、いま一度椅子の背に身をもたせかけ、遊びおいた片腕をぶらぶらさせてため息を吐く。
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