Ⅰ. もう一つの物語 パラグラフⅠ:22年前、襲撃

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 そんなやり方がはからずも按配よくいったとしよう。  それで? それは幸福な人生と呼べるだろうか? おのれの弱さにフタをし誤摩化したまま生涯を送った末に、彼はいったいどんな終末を迎えるというのか?  その種の人間は多勢いるが、自分はそこまでタフではないと染谷は自覚している。 「とにかくだ。何があったにせよ、証明できねぇことを追求している時間はねぇ。おまえたちはいの一番にしなきゃならねぇことを完遂してくれ」 「それと、だ。こいつぁ念のためだが、好奇心はほどほどにな」  3人は無言でうなづいた。  いま現在、“掃除屋”の実動部隊として事後処理にあたっている彼らに、余計な詮索をしないよう釘を刺すのは莫迦げているかもしれない。  だが、染谷自身が職業柄そうであるように、人には真実を追求したいという欲求がある。  今夜この地で何かが起こった――趣味人の救命士ならずともそそられるところだろう。  染谷はザックの手を引き、「プレッツェル班が到着したぞ。チョコレート・ドリンクとプディングつきだとさ。豪勢だな。車ン中で食うか?」  などと話しながら場を後にする。従順にしたがうザック。  しかし、どうしても気になってしまうのだろう、たまらずふり返って、処置ベッドに寝かされたまま微動だにしない梶井由宇一郎の姿を、心もとなげな様子でじっと見つめる。  揺れる眼差しは足先しか見えない梶井を通り越し、先ほどの救命士と絡みあった。  救命士は口角を上げ、相好をくずして見せたが、ザックはそれには応えなかった。
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