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「この数年間で、見過ごせない数の捜査官が任務終了後消息を絶っている――まあ臭うよね、フツーに」
潜入捜査はときに過酷だ。緊張状態の常態化が心身におよぼす影響は計り知れない。
おのれを殺し、色に染まりながら、最奥では自己を保ち続ける――相応の訓練を受けた者でも容易にはいかない。
孤独、抑圧、混乱に直面してなお気を緩めることは許されず、数手先を見据えて行動する。
少しでも不審を買えば、労苦が水泡と帰すばかりでなく、命の危険に晒される。
潜入先は違法薬物密売組織を筆頭に、人身売買、臓器売買および斡旋・仲介業者、不正の温床になりやすい財団、インサイダー取引や脱税疑惑のある大手企業、宗教団体、NPOなど多岐にわたる。
最終的に検挙につながる率は高いが、その分リスクも大きい。
潜入捜査には規定が設けてある。
刑事歴五年以上で凶悪事件に関わった経験があり、一定期間訓練を受け実地テストをパスした者――検挙率アップのために闇雲に捜査を行った過去から学びとった教訓だという。
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