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人は、自分以外のものになれと言われて一時的にそれができたとしても、長く続けるには強い忍耐を要する。
自己を完全に捨て切れるとしたら、それは自我が崩壊したときに他ならない。
そうではなく、自覚しながら終始演技を強いられる場合、精神のどこかしらに穴が穿たれる。
放っておけば穴は徐々に大きくなり、やがては修繕不可能になる。
そうならないよう、繕えるうちに穴を繕い、必要なら上書きしてやるのが自分の“裏商売”なワケだが……。
「ねぇ染谷さん、一応確認なんだけどさ。俺の十八番は“見つけられない”なんだよね、知ってると思うけど。
なのに、アンタはこの人たちを“見つけろ”って言う。見つけてどうしようっていうわけ? ぜんぶオープンにしてくれないと、モチベーション上がんないんだけど?」
抹茶入り玄米ティーを美味そうに啜る由宇次郎の姿は、染谷には怪訝に映る。
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