4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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「だけど、職務中のストレスが主要因で、捜査官がうつ病や不安神経症になったてんなら、受診理由としちゃ正当なわけでしょ?  問題なく認可されるだろうし、堂々と通院できるはず」 「長期療養を渋る連中が、通院なんかさせると思うか?」  染谷が皮肉めいた微笑を浮かべる。 「……そりゃまぁそうだけど。だったらヤミ医者は? 探せばそれなりにいるはず。特捜がそんなこと率先してやっていいのかどうかは置いといて」 「ヤミ商売中のヤツにんなこと言われてもな」  表情を変えずに述べる染谷の、皮膚の下の微細な変化を見極めでもするように、由宇次郎は目を眇めた。  あくまでシラを切り通すつもりらしい染谷は、フーッと細く長い煙を吐き出す。  諦めたように肩をすくめ、由宇次郎が言葉を継いだ。 「察するところ、行方不明者の捜索は指示範囲内。でもケアまでは指示されていない、そうだろ!?  俺を担ぎ出したのはアンタの一存だ。四面楚歌? 違うね。公にできないから自ら周囲を遮断した(・・・・・・・・・)、が正解だ」
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